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コラムvol.3 奇人・変人と呼ばれた虎彦だからこそ。 女房を喜ばせた夫の豪傑さ。

世界初の包あん機の生みの親、林虎彦には予測不能な豪傑さがありました。仕事でもプライベートでも。世間の常識をものともせず、次にどんな手を繰り出してくるのか分からない、といったことが多々あったそうです。

 

たとえば、成功するとも分からないのに(多くの人に反対されたのに)、およそ10億円という巨額の借金をしてまでアメリカに製パン工場「オレンジベーカリー」を設立したり、東京に自社ビルを建設したときには、施行が終わったばかりにもかかわらず「壁のデザインが気に入らない」とビルの一部をぶち壊してやり直しを命じたり……。

 

また、1987年にレオン自動機株式会社が株式を上場したときには〝社員株制度〟を設けて、社員たちに株を配当したといいます。わずか2年7カ月で一部上場を果たしたこともあり、役職についていない平社員が億万長者になったとか! 夢のあるこの事実は世間の注目を集め、テレビ局が取材にやってきたそうです。

 

信念には実直で、お金にはある意味、無頓着──仕事現場ではいざ知らず、虎彦の常識に囚われない大胆不敵な行動はときに、妻・和子を喜ばせる大きな優しさを秘めていました。

 
 

クリスマスケーキはお城型

 
 

ある年のクリスマス。虎彦は和子のためにデコレーションケーキをつくります。もともと和菓子職人でしたが、パン屋や洋菓子店での修業経験もあり、ケーキづくりはお手のもの。しかも、かなりの凝り性ですから普通の丸いケーキなどでは飽き足りません。つくり上げたのはヨーロッパのお城をイメージしたチョコレートケーキです。しかも、2人で食べきることなどできないほど立派なものでした。

 
 

 
 

城壁に煉瓦を模したクッキーやスポンジ生地が並べられています。和子曰く「上質なチョコレートを使用した生クリームはコクがあってリッチなのに甘すぎず、軽やかだし、少しだけリキュールを利かせてしっとり仕上げたスポンジケーキの中には、真っ赤なラズベリーの砂糖漬けが入っていて、相性も抜群です。」(書籍『すっぴん』p168)

 

豪華な見た目や極上の味わいに魅せられたことはもちろん、虎彦が自分のためにつくってくれたという、その思いこそが和子を何より喜ばせました。

 

ヘリコプターで箱根にランチ

 

手製のケーキはほんの序の口です。和子のための豪傑ぶりはレオンの成長にともない、さらに加速していきます。

 

その1つがヘリコプターです。「飛行機をつくりたい」「空を飛びたい」という虎彦の少年時代からの夢を実現する意味もあったかもしれません。機体には「RHEON」のロゴマークを施し、常駐の操縦士も雇い入れます。全国各地の支店や取り引き先への出張はもちろん、お客様を本社から少し離れた工場へとお連れするときなど仕事で使うことが目的ですが、休みの日には和子を連れて、空のドライブに出かけます。

 
 

 
 

和子曰く「晴れた日は本当に気持ちが良かったわ」。なかでもお気に入りは箱根への旅でした。ヘリポートのある箱根のゴルフ場にヘリコプターを駐機し、レストランで虎彦とランチをするのが最上のお楽しみ。ある年の正月には、毎年恒例の箱根駅伝を眺めるために、ヘリコプターを飛ばしたこともあるといいます。
鬼怒川時代の貧乏生活からは到底考えられない豊かな時間を過ごした和子でした。

 

麗しきバラの家

 

数あるプレゼントのなかで、和子を最も喜ばせたのはバラの家です。

 

普段、仕事漬けの毎日で和子にかまうことのできない後ろめたさもあったのでしょう。虎彦は和子の大好きなバラの花が楽しめるセカンドハウスをつくりました。通称〝ローズハウス〟または〝和子の庭〟とも呼ばれています。宇都宮の日光街道沿いにあるものの、ローズハウスの周辺だけはどこかヨーロッパの雰囲気が漂っていました。

 
 

 
 

庭には多品種のバラが1年を通して咲き誇ります。

 

真紅で大輪の花びらをつける「緋扇(ひおうぎ)」や、赤黒くビロードのような光沢の「黒真珠」、凜として鮮やかな黄色の「金閣」、淡いピンクで可憐な「花嫁」……。

 

バラに囲まれた庭の中には白く小さな洋館が建っています。和子にとっては憩いの空間です。ときには友人とお茶を楽しみ、あるときはレオンの社員を招いてパーティーを開いたことも。そして何より和子は、ローズハウスでの一人の時間を楽しみました。家の中には趣味を詰め込んだ和子の部屋があるといいますが、ここに入ることを許されたのはほんのひと握りの人間だけ。まさに秘密の花園です。

 

バラを眺めながら和子は一人何を思ったのでしょう。当時の心の内を知る人は誰もいません。

 

 

こんな話をすると、和子はひたすら虎彦のことを大人しく待っていたかのように思えるかもしれません。もちろん影となり支えてきたことは間違いありませんが、ただ従順に虎彦の一歩後ろを歩いていたのかと問われれば……決してそうとは言えません。

 

次回は破天荒な虎彦を支え続けてきた、妻・和子の豪傑物語をお伝えします。

 

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